運営者インタビュー|会員数200名を超えるコワーキング&シェアオフィスBUSO AGORA担当者が考え続けていること
小さな一軒の焼鳥屋からスタートし、多数の飲食店を経営している株式会社キープ・ウィルダイニングが運営しているコワーキング&シェアオフィス。それが、BUSO AGORAです。
今回はオープンして約3年経った今のBUSO AGORAのリアルな様子について、株式会社 キープ・ウィルダイニングの経営企画室 室長 長谷部さんに話をうかがいました。
「連載|コワーキングスペース、運営のリアルを教えてください!」
「コワーキングスペースをオープンしました!」という記事は多くありますが、オープンしたその後のリアルについて触れる記事はあまりありません。この連載では、気になるコワーキングスペースの担当者様に直接話を伺い、思想や理想を深堀りしつつ、リアルな運営の様子をお伝えします。
▼コワーキングスペース&シェアオフィス BUSO AGORAとは?
BUSO AGORAは、株式会社キープ・ウィルダイニング(代表取締役社長:保志真人)が〝夢が加速する〟というコンセプトのもと町田駅徒歩3分の場所に運営している、事業相談もできる東京都認定インキュベーションオフィスです。カフェのリラックスした空気感とオフィスの快適な設備を兼ね備え、約520平米(157坪)の広々とした空間で快適なワークタイムを提供しています。インキュベーション マネージャー(事業アドバイスを行う専門家)が在籍しており、起業する方の相談・サポートが行われています。


https://www.incubation-office-agora.com
飲食店を多店舗経営する会社が、本当にやりたいこととは?
―多数のレストラン、カフェを経営されている株式会社キープ・ウィルダイニングが、どのような経緯でコワーキングスペースをつくったのですか?
事業を進めるにあたっての特徴として、町田・相模原エリアにドミナント展開してきたということがあります。このエリアはその昔、武蔵の国と相模の国の国境にあった場所で、『武相』と呼ばれていたことから、私たちは武相エリアと呼んでいます。
この武相エリアを元気にしたいという思いがあります。東京ローカルの活性化を会社として取り組み、掘り下げていきたいのです。
その第一歩が、飲食店の展開でした。私たちは、どんな飲食店があるかということが、まちのイメージを作ると考えています。例えば、旅行の感想を聞かれた時、どんなことを答えますか。人のあたたかさや、文化についても言及するかもしれませんが、多くの方が、一番目か二番目に食についてのコメントを挙げられます。
では、ここ武相エリアの食ってどんなものなのか?都心と違った特色はなんなのか。私たちの経営する飲食店1つ1つが、この武相エリアのイメージを作り、ブランディングをしている、そんな想いで店舗を展開してきました。
そして、徐々に経営する飲食店の店舗数が増えてきて、次のステージに移ろうということになりました。もちろん食も大事だけれど、エリアのブランディングは、食だけではない。食を中心にしながらも、食以外では?と考えた時に生まれたプロジェクトの1つが、このコワーキングスペースです。
―なぜ、地域の活性化の方法として、コワーキングスペースだったのですか?
背景として、この武相エリアに暮らす人たちが、都心に行って起業していってしまうという状況認識がありました。
みんなのチャレンジの場が都心になってしまうと、この地域はおもしろくならない。私たちは、この地域をおもしろくしたかった。スタートはそこにあります。
ここ武相でチャレンジしようとする背中を押したい
―「夢が加速」するというコンセプトですが、どのような想い、意図が込められていますか?
人それぞれ、やりたいことを持っていると思いますが、実際に形にできる人はどれほどいるでしょうか。本当に能力があり、行動もできる人は、自分自身で実現するでしょう。
私たちが応援したいのは「あと一歩か二歩踏み出すことができれば、夢を実現できるかもしれない人」です。都心に行くのではなく、ここ武相で、地元でチャレンジしようとする背中を押せたら。
夢の実現まで5年、10年必要だったかもしれないことが、私たちのサポートで、3年でできた。本業とは別にライフワークとしてやろうと思っていたスモールビジネスが、軌道に乗って本業になった。そんな夢の後押しを、ここ武相エリアでできれば、と考えています。


200名を超える会員同士がつながりあう環境
―オープンしてから約3年が経つ現在、どのような方が活用されていますか?
会員様は200名を超えているので、本当に多種多様な方がいらっしゃいますね。
個室を借りている方でいうと、社員数が2〜3人の事業者だとか、何店舗か経営している美容院の本社として借りられているというケースもありますね。
おもしろいのは、BUSO AGORAのフリースペース会員として知り合った方々が、個室を借りてシェアしているというケースです。


―BUSO AGORAで出会って、そこまで仲良くなるとはすごいですね。でも、わざわざ個室をシェアするメリットはあるのですか?
個室を借りれば、24時間365日使えるというのが一番大きな特徴です。会議室も無料で使えるなど特典もあります。
―利用されている方に特によろこばれているポイントはどこだと思われますか?
やはり、つながりができるということですね。
BUSO AGORAを運営するにあたって、コミュニティづくりというのは大きなキーワードになっています。横のつながりができるというのは、入会する理由にはなりにくいのですが、やめない理由にはなる。ただ働きやすいだけではなく、仲間がいるから行きたくなるし、コミュニティから抜けたくない。そんな場になっていると思います。


「接客がめちゃくちゃうまい」飲食店経験のあるスタッフの力
―コミュニティーづくりを重視したコワーキングスペースは多くあると思いますが、BUSO AGORAならではという点があればお聞かせください。
定期的にイベントを運営したりと、きっかけづくりを行ってはいます。ただ、普段の運営においてこそ、私たちらしさがあるのかなと。というのも、キープ・ウィルダイニングは飲食店をやっていて、スタッフも飲食店での勤務経験がある。だから、接客がめちゃくちゃうまい。
例えば、施設の案内をしたり、契約の対応をしたりするだけでも、オフィスの硬い受付のイメージではなく、自然で親密なコミュニケーションを取ることができるんです。どういう経緯でいらっしゃったんですか? 雨が降ってましたが大丈夫でしたか? とさらっと言える。目の前の方が何をしたら笑顔になるのかを、瞬発的に考え、行動できる力が、BUSO AGORAのスタッフには育まれている。
先日も、スタッフがせっせとクリスマスプレゼントを作ってましたね。こういう、大きい会社がやらないようなことにこそ、私たちらしさがあるのだと思っています。


「どうやって事業を継続させていくか」に、向き合い続けてきた
―運営する中で苦労している点や、課題だと考えていることがあれば教えてください。
この事業を、ビジネスとしてどう成り立たせていくかということは、BUSO AGORAオープン以来、頭から離れたことはないですね。
コワーキングスペース、シェアオフィス事業は、オープンする時点で会員数ゼロからのスタートになります。飲食店であれば、オープンしたという目新しさからもお客様が集まります。でも、この事業は、そうはいかない。マイナスからスタートして、会員を集め、ちょっとずつちょっとずつ積み重ねて行く、ストックビジネスです。
どうやって事業として利益を得て、継続させていくかというのは、向き合い続けていることです。
というのも、起業の相談やサポートをしている私たちとして、自分たち自身もビジネスを成立させていかなければいけない。そうしなければ説得力が生まれないですよね。
―今後の取り組みや展望について教えてください。
2023年2月には、多摩信用金庫から運営を受託して、コワーキングスペース・インキュベーションオフィス・サテライトオフィスの機能を持つ交流拠点「たましん地域/未来共創センター 『me:rise立川(ミライズタチカワ)』」をオープンしました。
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この立川のケースのように、行政や支援機関などと協力して、インキュベーション機能を持つコワーキングスペースの運営を行っていきたいですね。
こういう施設は、行政が単体でやるより、行政とコラボしつつも民間がやったほうがいいと私たちは考えています。
民間が運営することにより、収益と背中合わせて考え抜く環境が生まれる。いかに居心地のいいサービスを届けるか、いかに結果を生む起業サポートを行うか。真剣に考え、行動を続けることで、質を高め、人が集まり、それが収益につながり、事業を存続できる。民間が行うからこそ、適度な競争原理が働いて、いい循環が生まれるのではないか。
そして、それは将来的には、地域活性化につながっていく。地域に起業家が集まっていく。そんなビジョンを描いています。
BUSO AGORA
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